遺言

遺言書の決まり事

遺言書

相続・遺言を中心に大阪で行政書士事務所を運営しております、行政書士の尾桐です。

この記事をお読みくださりありがとうございます。

そろそろ”終活”を始めようと思ってはいても、何から始めればいいのかわからないという方のためになるように終活にまつわるあれこれなどについてお伝えしております。

今回は意外と知られていない遺言書の形式や決まり事や注意すべきポイントについてです。

自筆証書遺言作成の注意点

遺言書といえば公証役場で作成してもらう「公正証書遺言」と自分で書く「自筆証書遺言」があるということは多くの方がご存じだと思います。(他にも秘密証書遺言や危急時遺言もありますが、一般的にあまり使われることはありませんので、今回は割愛します。)

公正証書遺言はご自分の希望する財産の分割方法や相続に関する事項などを公証人に伝え、その内容を公証人が作成し書面に記すものです。遺言書の内容に関してご自分で書く必要はありません。
最終的に公証人の作成した遺言書の内容を確認し、署名・捺印をするだけで良いので形式などにより無効になる心配はありません。

自筆証書遺言は文字通り”自筆”で作成するものなので手軽であり、費用もかからず作成できますので一番取り掛かりやすい遺言書であり、多くの方は遺言書といえば自筆証書遺言書を思い浮かべることかと思います。

でも自筆で書いてあればどんな書き方でも良いわけではありません。遺言書の形式は結構細かく決まりごとがあり、法律に則った形式でないと、せっかく作った遺言書も無効となってしまうこともあるんです。

そこで、これから自筆証書遺言書を書こうと思われている方に向けて、作成方法や気を付けるポイントなどをお伝えします。

自筆証書遺言書の作成で気を付けること!

ご自身で自筆証書遺言を作成するには正しい知識を知っておくことが大切です。
何度も作り直すことにならないように、基本知識と注意するポイントをお伝えします。

自筆証書遺言作成の基本知識

  1. 意思能力・遺言能力・・・遺言書を作成した時点での意思能力で判断される
  2. 正しい形式・・・・・・・法律に則った形式で作成されていない場合は無効となる
  3. 遺言の内容・・・・・・・公序良俗に反する遺言は無効となる
  4. 遺言書の保管方法・・・・法務局で保管してもらえる
  5. 遺言書の撤回・・・・・・遺言書は何度でも書き直しできる
  6. 遺留分・・・・・・・・・遺産の分割方法は遺留分に気を付ける
  • 意思能力とは財産の分配方法を理解しており、それを基に自らの意思で行動できる能力です。遺言能力とは遺言書の作成時に成年に達していることや精神的に健全であることなどのことをいいます。遺言は満15歳から作成することができます。
    具体的には遺言作成時に認知症や精神上の病気により遺言を作成する能力があるということで、なかったとされた場合には、その遺言書は無効とされる可能性もあります。
    相続で揉める原因の一つでもあるので、きちんと証明できるようにしておきましょう。
  • 遺言の内容は原則として自由なものですが、公序良俗に反する内容であればその部分は無効となります。例えば、遺産を受け取る条件として、違法な行為を要求する内容(例:犯罪行為の指示など)です。
  • 遺言書の保管に関しては決まりはありません。ご自分で保管しても、銀行の貸金庫や信頼できる方に預けても構いません。ただし、これらの場合は遺言書があることを確認した後に開封する前に家庭裁判所で検認を受ける必要があります。この検認の手続きをしなければ遺言通りに登記や銀行手続きができません。また紛失や隠蔽のおそれもあります。
    現在では、少し手間はかかりますが、法務局で遺言書を保管してもらえる制度も始まっておりますので、ご自分にとって一番良い方法で保管しましょう。
  • 遺言書は一度しか書けないものではなく、遺言書を作成する能力のある間は何度でも新しく作り変えることができます。遺言書を作成してから気持ちが変わることもあるので、遺言の内容を変更したい場合には新たに作り直すことができます。
    遺言書が複数見つかった場合は原則として一番新しい日付のものが採用されます
  • 遺留分とは法定相続人が最低限受け取れる相続分の権利ことです。当たり前にもらえるものではなく、自分の遺留分が侵害されているときに遺留分侵害額請求権を行使できるというものです。ただし、全財産を誰か一人に相続させた場合に他の相続人から遺留分を請求されることになると家族が揉める原因になるので、遺言書を作る際には遺留分に配慮した分配方法の遺言書にしておくことが円満な相続につながります。

遺言書の基本的な記載内容・形式

遺言書に必ず記載する内容や形式は下記のとおりです。どのような遺言内容であっても最低限これらの記載が正しくされている必要があります。

  1. 遺言者(本人)の情報・・・氏名・生年月日・住所などの自分の情報
  2. 遺言書の作成日・・・・・・〇年〇月吉日などの場合は無効
  3. 財産の分配方法・・・・・・どの財産を誰に、どのように相続させるか
  4. 分配する財産の内容・・・・相続させる財産の情報
  5. 署名と押印・・・・・・・・実印推奨(実印でなくても法律的には可能)
  • 遺言書の作成日必ず〇年〇月〇日と正しく記載します。遺言書が複数見つかったときには、一般的には後の日付のものが有効とされます。そのためにもきちんと日付を書くことはとても大切なポイントです。
  • 財産の分配方法の記載についてはいくつか書き方があります。
    ☆特定の財産を特定の相続人に承継する場合は「○○に相続させる」と書く
    ☆法定相続人以外の人に承継することを“遺贈”といいます。例えば孫やお世話をしてくれたお嫁さんや友人など法定相続人ではないが財産をあげたい場合には遺贈になりますので、この場合には「○○に遺贈する」と書きます。
  • 分配する財産の内容はすべて自筆で書く必要はなく“財産目録”として別紙で添付することができます。財産目録は内容が正しければパソコンで作成したもので良く、また代理人が作成しても構いません。内容がわかれば良いので不動産の登記簿や預金通帳のコピーを添付することも認められます。ただし、そのすべての用紙に自署で署名・捺印をする必要があります。両面に印刷した場合はその両面ともに署名・捺印をしなくてはいけません。

基本事項以外に遺言書に書いておけること

  1. 相続人の廃除及び取消・・・・財産を渡したくない相続人から相続権を失わせる制度
  2. 遺言執行者の指定・・・・・・遺言の内容を実行するために必要な事務を遂行する者を指定できる
  3. 祭祀を主宰者の指定・・・・・お墓や仏壇などを管理し、法事などを執り行う者を指定できる
  4. 特別受益の持ち戻し免除・・・生前贈与した財産などを相続分の計算には戻さないことの意思表示
  5. 予備的遺言・・・・・・・・・自分より先に相続人が亡くなった場合の内容の予備の遺言
  6. 付言事項・・・・・・・・・・法的な効力はないが、相続人に向けたメッセージ
  • 相続人の廃除とは特定の相続人から虐待や重大な侮辱、財産を浪費させるなどの行為があった場合にその相続人に相続させないために相続権を失わせることです。家庭裁判所に申立てを行い判断してもらう必要がありますが、認められれば遺留分の権利もなくなります。
    遺言者本人が生前に申立てして認められていた場合の取り消しを遺言書ですることもできます。
  • 遺言執行者を指定しておくと、その者が遺言の内容を実行します。遺言執行者は相続人でも他人でも複数でも構いません。遺言執行者がいれば相続の手続きも簡略になり、遺贈などをしたい場合は専門家を指定しておいた方が遺言の内容を実現できる可能性は高くなります。
    指定された者が自分でできない場合は専門家などに依頼することも可能です。
  • 特別受益の持ち戻しとは、生前贈与や遺贈により相続分とは別に財産を受けとっていた財産を相続人間で公平な相続になるようにそれらの財産分も戻して総財産と考え分配します。
    しかし、故人が生前にあげた財産は相続分に戻さなくてもいいという免除の意思表示をすれば、相続時には残った財産のみで分配することができます。これは遺言者の意思を尊重するものであり、言った言わないの争いを避けるため遺言書に明示しておくのが望ましいです。
    ただし、遺留分の計算をするときには免除することはできません
  • 付言事項には家族に対する感謝や想い、また財産の分配についての理由など伝えたいことを書いておくことができます。これによって多少不公平な遺言内容であっても納得する相続人もいると思います。法的な効果はありませんが家族に向けて伝えたいことがあればぜひ書いておきましょう。

以上が基本的な自筆証書遺言を作成するときの基本的なことや、注意点です。

上記の内容を参考に、ぜひ遺言書の作成に取り組んでみてください。

友だち追加はこちらから