相続

遺産分割協議書が必要な相続

遺産分割協議書

相続・遺言を中心に大阪で行政書士事務所を運営しております、行政書士の尾桐です。

この記事をお読みくださりありがとうございます。

今回は遺産分割協議書はどのような場合に必要になるのかについてです。

遺産分割協議書は必ず必要なの?

家族のどなたかが亡くなり相続があった際には、遺族はいろいろとやらなければならないことが発生します。
亡くなった方の遺産の分配について話し合いをし、協議書を作成することもその一つです。

全ての相続について遺産分割協議が必要かというとそうではありません。
亡くなった方が生前に有効な遺言書を残していれば相続人間で協議をする必要はなく、遺言書のとおりに分割すれば良いのです。
ただし、すべての相続人・受遺者がその遺言書に納得せず遺産分割協議をすることに同意した場合は遺言書の内容とは別の分配方法を協議で決めることもできます。
大事なのは一部の相続人ではなく全員が同意していることが必要となります。

どんな場合に遺産分割協議書が必要か?

では、どんな場合であれば相続人間で話し合い(協議)をして遺産分割協議書の作成が必要になるかといいますと、遺言書が残されていない場合を前提として、①相続人が複数人いる ②遺産の中に不動産が含まれる ③預貯金や株式などの解約や名義変更をする必要がある ④遺産の中に査定額が100万円以上の普通自動車があり名義変更や売却または廃車の予定がある(軽自動車は不要)⑤相続税の申告をする必要がある ⑥配偶者居住権の設定登記をする 

これらの相続手続きをする場合には戸籍謄本や遺言書または遺産分割協議書などの提出が必須となっております。
他にも相続手続きの際に遺産分割協議書の提出を求められることもあるかと思いますが、代表的なところでいえば前述した内容になります。
遺言書が残されていない場合は多くのご家庭で遺産分割協議書が必要になるのではないでしょうか。

遺産分割協議書ってどんな内容でもいいの?

遺産分割協議書は特に定められた書式があるわけではありませんが、法的に有効なものであることが重要となります。せっかく作ったのに提出先に認められなければ、作り直しや相続人全員の署名・捺印(実印)のやり直しなどの手間が生まれてしまいます。
相続人が多い場合や遠方に住んでいる場合などは大変ですよね…

不敵に有効な協議書を作成するには、多少のお金がかかっても専門家に依頼する方が安心だと思いますが、ご自分で作成される場合は以下のことに注意してください。

  • 遺産分割協議を始める前に戸籍を調べ相続人を確定させておく
    ➤協議後に別に法定相続人が判明した場合、協議は無効となります
  • 法定相続分どおりない場合は必ず相続人全員が協議で合意してから作成する
    ➤勝手な分配は揉めるもとになり、調停・裁判に発展する可能性あり
  • 協議書に必ず必要な事項の記載漏れがないように
    ➤重要な事項が抜けていると無効になることもあります
  • 相続人全員の合意もないのに他の相続人から実印を預かり勝手に押してしまう
    ➤無効となる可能性、損害賠償請求・私文書偽造罪の可能性あり

遺産分割協議書がいらない場合もある

亡くなった方の遺産の中に不動産や自動車も無く、預金が少額だけ(100万円以下)しかないという相続の場合には、遺産分割協議書がなくても手続きできる場合もあります。

通常、金融機関の相続手続きでは遺産分割協議書や遺言書の提出や、相続人全員の署名・捺印(実印)や印鑑証明を求められることが多いですが、金融機関によっては預貯金が少額の場合には受取人となる相続人1名の方のみで手続きが完了できる場合もあります。
それぞれの金融機関によって規程がありますので、手続きの前に各金融機関へお問い合わせしてみてください。

預貯金の名義人が亡くなったことを申出ることによって口座が凍結されてしまいますが、相続人の中の誰かが勝手に亡くなった方の預金をATMで引き出したりしてしまうことを防げるという利点もあります。

2019年からは「遺産分割前の相続預金の払い戻し制度」も施行されており、相続人1人で預金の一部を引き出せるようにもなっています。金融機関ごとに預金残高×1/3×法定相続分(上限150万円まで)でしたら、口座が凍結していても手続きをすれば引き出せますのでそれほど心配することでもありません。

「実印と印鑑証明を渡して」に気を付けて!

遺産相続の手続きが終わった後に「なんで私だけ少ないの?」「自分は兄弟と比べてこれだけしかもらってないのはおかしくない?」などといったことを言われる方がおられます。
聞いてみると、「長男にまかせてたら知らないうちにこうなってた。」「手続きに必要だから実印と印鑑証明書を出してくれと言われ、言われるままにしたらこうなってた。」ということもあります。

実印や印鑑証明書を渡してしまうと、どんな内容の相続になったかもわからないまま合意して遺産分割しましたという外観が出来上がってしまいます。
つまりは、自分には納得しない遺産分割であってもそれが有効になってしまうということです。

遺産分割が終わってからそれに気づいて言ってみても、自分達の話し合いで解決するなら良いですが、大抵の場合は聞き入れられることはあまりないでしょう。
なぜなら、遺産を多くもらおうとしている人は、うまいこと言ってハンコ押させたらこっちのもんだと思っている場合が多いからです。

本来ならきちんと遺産の内容を開示し、どう分配しようかと話し合うのが遺産分割協議です。
なのに協議をせずに協議書だけ自分の都合の良いように作ってハンコを押させ、遺産のほとんどを自分に入るようにするような人も世の中にはいるのです。

このような事態にならないように注意することは、見てもいない協議書に実印を押すようなことは絶対にやってはいけません。

今の時代、長男だからとか同居していたというだけで遺産を多くもらうのが当たり前ということはありません。相続人にはそれぞれ権利があります。

納得のいかない遺産分割がされようとしているときは、ハンコを押す前に話し合いの場を設けたり、専門家に相談するなどして、後々に揉め事が調停や裁判沙汰に発展しないようしっかりと対処することを心がけましょう。


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